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第228話

「それじゃあ、あなたの分の航空券を買うわね」

「ありがとう」

この二人は、いちゃいちゃしながら歩いて先へ進んでいた。

その後ろに、冷え切った雰囲気で残されたのが弥生と瑛介の二人だった。

二人はそれぞれ別々に歩いていた。弥生は、義理の父と母が仲良く前を歩いているのを見ながら、自分と瑛介の間には親しさが全くないことに気づいた。

このまま何事もなかったように行っても、祖母に会うときにあまり良くないのではと思った。

そこで、彼女は足を止めて瑛介に言った。「車の中で待つわ」

その言葉を聞いて、瑛介は歩みを止め、しばらく彼女を見つめていた。先ほど言いそびれたことがあったので一緒に行こうとしたが、彼女はすでに背を向けて歩き出していた。

瑛介は顔色を変え、青ざめた表情で彼女を追いかけ始めた。

その頃、瑛介の母は航空券を買い終え、瑛介の父と共に二人に声をかけようと振り向いたが、目にしたのは弥生を追いかける瑛介の後ろ姿だった。

「まったく、この二人は......」瑛介の母はため息をつき、手を振りながら言った。「まあ、放っておいて、母のところに行きましょう」

「うん、いいよ」

息子のことは、瑛介の父もあまり心配していなかった。大人なんだから、感情の問題ぐらい自分で解決できるだろうと。

それで二人は早々に立ち去り、瑛介の祖母を迎えに行った。

弥生は瑛介に声をかけて、そのまま振り返らずに立ち去った。

彼女は急ぎ足で歩いていた。ゆっくり歩いていたら、瑛介に追いつかれてまた何か言われるだろうと思うからだった。

病院を出て、そのまま駐車場の方へ向かった。

彼女の頭の中は、祖母の手術のことでいっぱいだった。

もし手術が数日以内に行われるなら、祖母を家に戻した方がいいかもしれない。祖母は看護施設が嫌いなので、家で過ごさせ、手術の直前になったら連れて来る方が良さそうだ。

そして、今度は祖母が手術室に入るまで、必ず一緒に付き添うつもりだった。

そう考えながら車にたどり着いた。

気づけば、彼女はほとんど駆け足で来ていたようだ。

車を目の前にして、彼女はある問題に気づいた。

それは、瑛介から鍵をもらっていないということだった......

仕方なく、外で待つしかなさそうだ。

その時、背後から冷たく怒りを帯びた声が響いた。「弥生」

弥生は驚き、振り向く間もなく手
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